「やまとことば」の意味するところ(1)

私が「やまとことば」に興味を持ったのは、春日大社の葉室頼昭宮司のご講演の中に紹介されていたからです。その時の講演のことは今でもはっきりと覚えていますが、珍しく正面のスクリーンに宇宙創成の年表の後、周期律表(H,He,Li,Be…)が映し出されていて、「私は宮司であるけれど、今から神道などの宗教の話をするつもりはない。自然科学の話をしている。」と前置きしながら、宇宙創成「ビッグバーン」の話や、「醗酵と腐敗」の違いを説明できる人はいるか?などと話しかけられながら、「私の弟子に、私の言うことを理解できる人は一人もいない、誰かその辺のことが理解できる人で、弟子になる人はいないか?」と言われたことを思い出す。実は、そのとき手を上げたくて仕方がない自分がおり、状況が許せば手を上げていたかもしれないという状況でした。そのことを今でも後悔していますが、著書である「神道見えないものの力」を読んでから、世の中に偶然などありえない、すべてが必然であり、多分、私がその時に手を上げなかったことも含めてそれが運命だったのではないかと納得しました。

葉室宮司のいくつかの本の中で、やまとことばが紹介されていて、その情報の元が中西進先生の「にほんごのふしぎ」という本であることが解り、その本も参考として「やまとことば」を紹介したいと思います。

『日本にまだ文字ない時代、『音』だけでコミュニケーションを取っていた時代のことばです。そのひとつひとつの音の意味するところにある概念が存在します。

つまり、同じ立場や役割・機能を持つものを一つの単語で呼び、ものとして形態が違っていても言葉として区別しないで使っていると言うことです。

逆に言うと、同じ音でも、状況によってはその意味するところが、異なり、

「その概念」のひとつの「切り口」で表現されることになるということです。

 

例えば、まず、お祝い事でお酒が出てきます。「さけ」と言うやまとことばから入りましょう。お酒を飲むと気分が高揚します。そうすると幸福感も宿ります。生命の充実みたいなものを感じます。同じような言葉があります。「さく」「さいわい」「さきはひ」「さかり」などお言葉があります。「さき」は、花が咲くという状態を意味します。「はひ」「はふ」という言葉の意味は、長く続くという意味ですので、そうすると「さきはひ」は咲いた状態が長く続くという意味になります。これが「さいわい」という現在でも良く使われている「幸い」を意味することになります。しごく具体的な気持ちの状態を意味しています。そうすると「さけ」とは、そういった生命の充実した気分を誘う飲み物ということになります。

「さき」という言葉の意味は、それ以外に岬、先、崎などと同じなのですが、先端が尖っているピークを意味すると言う意味では、咲くも同じ、ピークを意味していると言うことになり、概念に共通する部分がみてとれます。

漢字は外来文化ですが、このように漢字で書くと、同じ音でも概念を細分化して特定の意味を表すのにうまく使われています。しかし、それでは「やまとことば」の本来の良さである「思いやり」は出てきません。民俗学者の柳田国男は、「どんな字を書くの?」と尋ねることを『どんな字病』と呼んで警告しています。漢字で、意味を解りやすくする前に音で相手のことを思いやることの大事さを言われています。

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